諸芸あい通ずる処これあり

私はレッスンを行うにあたり、先ず、受講される方が過去に如何なるスポーツを経験されたかを問うようにしている。
御存じの通り難解極まりないゴルフスイングを、アマチュアの方が身体で理解し頭で理解するために、御自身が既に知っているスポーツの基本動作と照らし合わせることによって、受講者のレベルアップにスピード感を持たせたいからでもある。

スポーツは総じて、股関節と肩甲骨の動きを核として、腕や脚の内旋外旋運動などを感覚的に理解する必要があるが、ゴルフの場合は「ゴルフクラブを如何に動かすか」の論理を求めるところから、両腕の回内回外運動や手首の動きなども重要となってくる。道具を使うスポーツの中でも、最もデリケートな再現性を求められるスポーツだと言われるが故に、自己のメンタルの影響を非常に受け易い。まさに薄氷を踏むが如きスポーツだと言えるのではなかろうか。

ゴルフは、天空にそそりたつジェンガ(積み木崩しゲーム)の塔だ。

だから、、、自己の慣れ親しんだスポーツの動作から何かを導き出せる ‟同じイメージの動作” を知っておくことが、その個人にとって大きな拠り所となる。諸芸には、あい通ずる処あり、なのだ。極論すれば、それはスポーツに限ったことでは無い。

 

【Gスタジオ&合田洋ゴルフクリニック】

ドライバーの重心距離

ドライバーヘッドの ‟重心距離” は、日本のアマチュアゴルファーにとって余程重要なのか、昨今では、どのドライバーにあっても、その機能説明が為されるにあたり、その数値がカタログなどに明記されていることが多いようだ。ネット等でドライバーを探し求めれば、必ずと言っていいほど重心距離の数値は明記されている。
とは言え、その明記のされかたは、あたかもドライバー単体の ‟つかまり具合” を指し示す絶対指数のように喧伝され、多くのユーザーにイメージされてしまってもいる。
私は、この ‟ボールのつかまり具合” に対しての重心距離数値至上主義的な考え方に疑問を抱くを禁じ得ない。。。

私にとって、重心距離数値を知ることは然程重要なことでは無い。

なぜなら、ボールの ‟つかまり具合” は実際にボールを打つことでこそ得られるし、当然のことだが、試打もせずにゴルフクラブを購入することなど有り得ない。また、私にとってドライバーの ‟ボールのつかまり具合” は、アイアンやFW等とのクラブセッティングの流れに纏わる要素としてこそ重要なものであって、ヘッドの設計数値の一部分としか言えない ‟ドライバーの重心距離を示す数字” が【実際には余り意味を持たない】ことを知っているからだ。

重心距離を示す数値は、単なる目安でしかない。

私を含めたプロゴルファー全般にとって、自分のキャディバックの中身を構成する「アイアンセットの‟ボールのつかまり具合”」と、「ドライバーの ‟ボールのつかまり具合”」とに、整合性が保たれていることこそが重要なことである。しかし、プロゴルファーよりも遥かに練習頻度の低いアマチュアゴルファーには、それこそが、極まりなく重要なことだと断言できる。
要するに、自分の使用している ‟アイアンのつかまり具合” から精査せずして、なにがドライバーの重心距離数値なのだろうか、、、ということでもあるのだ。

因みに申し加えれば、いくら重心距離数値が短いドライバーであったとしても、フェースアングルが左を向いているドライバーには、その ‟つかまり具合” は敵うはずも無い。

 

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スウィングバランス

ゴルフクラブのバランスは気にする必要が無いなどというフザけた記事がそこここに出回っているが、まったくもってけしからん話であると腹が立つ。プロゴルファーの観点から物申せば、スウィングバランスは極めて重要な要素だ。
ときにその記載には 「プロゴルファーだって1ポイントのバランスの違いを言い当てることは出来ない」 などと口上されていたり、振り易さとスウィングバランスは相乗作用を持つものでは無いなどという “そもそも論” を逆手にスウィングバランスの重要性を否定していたり、あろうことか、クラブの長さと総重量を合わせればスウィングバランスは大体にして揃うなどという至理の翼を訳知り顔にアマチュアゴルファー諸氏を無理やり納得させようとしているが如く映る。
これを推察するに私は、製造する側または製作する側の偏曲的論理なのではなかろうか。。。とさえ思う。

スウィングバランスは、ゴルフスウィングを敢行するにあたり、シャフトの特性を生かすに於いて、大変重要な要素たりうる。
つまり、スウィングバランスはゴルフクラブの大切なクオリティであり、ひいては、そのクラブが作製されるにあたり如何なる意図を持つかという点に於いても、考え尽くされるべき要素だと言えよう。

実を物語れば、ゴルフクラブのスウィングバランスは、プレーヤー自身の個性の表れでもある。だから、プレーヤーが自分のクラブに何を求めるかでも変わってくる十把ひと絡げで論じることなど不可能な個別要素でもある。

ここには、私に相談が持ち込まれる御客様のクラブを拝見するにあたり、このクラブは(クラブセットは)何を意図して製作されたクラブなのかが全く見えないものが多すぎる、ということがある。
そこには、製造する側の「そんなことまでヤッてたら儲からない」という内なる声や、製作する側の「面倒くさい」という本音が聞こえてくるようだ。

侍の差料(自分が帯びる刀)は、ただ腰に携えるものではなく、己の剣技に合ったものだった。
ゴルファー自身の為に製作されたゴルフクラブの製作意図が見えないなどということが、あってはならないのではなかろうか。

 

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努力

“努力” をナメたらいけない。
ときに人は、ヤッた努力を評価する的な考えを持ったり満足したりもするけれど、お父さんは、そんな風に考えたりは絶対にしない。なぜなら、結果を出すために努力したことには必ず答えが出るからだ。だから私は、ヤッた行為を評価するような考え方が好きではない。
“行為” ではない “努力” には、必ず “結果” が顕れる。どんな結果を得られたかは、あとの楽しみということもある。しかし、単なる行為でしかなかったものには、残念ながら自己満足しか顕れない。
その人間にとって、それが “努力” であったか、それとも “行為” であったかを知る術は、そこに “結果” が顕れたか “自己満足” しか得られなかったかで推し測れるとも言えるだろう。
また “努力” ではない “行為” に満足しようとする人間は、いつまで経っても人として自立できない人間だとも言えるのだ。

・・・という話を、先日、久しぶりに帰宅して子供達と話した。こんな親父の話を聞いて 「お父さんの話を聞くと(自分自身が)元気になれる」 と言うところが、うちの子供達の不思議なところである。

 

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何を知るのか。

昔、娘が中学校に入るとき、「中学になったら剣道を辞めて他の部活に入ろうと思う」 と言ってきた。私との約束は “いったん始めると決めた以上せめて小学校を卒業するまでは剣道を辞めない” というものだったから、その約束は達成されるので何も問題はなかった。
だけど私は娘にこう言った 「お前は6年間、剣道をやって来たけれど、やっぱり剣道は嫌いか?」、すると彼女は 「大嫌いに決まってるじゃん!今までだって辞めたくて仕方なかったけど、お父さんが辞めさせてくれなかっただけだよ」 と言った。
私は言った 「すると剣道は辛かったし面白くなかったわけか」。即座に娘は 「当たり前じゃん!でも私は約束を守って小学校卒業までは頑張ったんだからね!」 と、笑顔で私に勝ち誇った。私は 「なるほど。では、お前は剣道の “辛さ” や “面白くなさ” を充分に知ったわけだな」 と笑った。娘は言った 「そういうこと!」。
だから最後に私は 「そうか、それは残念だったな。6年間も頑張って来たのに。結局 “剣道の面白さ” のほうは少しも知らずに辞めてしまうわけか・・・」 と問いかけたのである。

翌日、娘が取った行動は、剣道部に入部届けを出すことだった。

そして結局、中学&高校生時代は剣道部と共にあるような学校生活を送り、どうも剣道の魅力を知ってしまったようで、大人になった現在でも、県の社会人大会に個人エントリーして出場しているようだ。
ひとつの事柄のなかに “面白くなさ” と “面白さ” の両面が存在することを知っているのは宝だ。父親として、彼女の人生に幸あれと願うばかりである。

 

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手紙

おはよう御座います。
昨日は御疲れ様でした。

さて、貴殿が御質問の 「ドライバーによって飛距離は変わるのか否か」 について少し御話をさせて頂きます。

結論から申し上げますと。ドライバーを変えると確かに飛距離は変わります。
以前レッスンで御説明させて頂きました通り、アイアンの飛距離を決めるものがロフトであることに対して、ドライバーの飛距離を決めるものは、①打出角 ②スピン量 ③ボール初速 という3つの要素の兼ね合いです。
まずは下記に、この3要素を簡単に御説明いたします。

①打出角 
ロフトには「表示ロフト」に対して、「ダイナミックロフト」と呼ばれる実際にボールを打ったときに作用するロフト角があり、打出角は、このロフトに大きく左右されます。関係する要素は、ドライバー単体の「リアルロフト」=(正面から見たときにシャフトを垂直に且つフェース面をスクエアにセットしたときに計測されるロフト角)とシャフト特性ですから、この双方を吟味する必要があります。

②スピン量
やはり上記の「リアルロフト」とヘッド単体の持つ重心位置、また、総重量、シャフト、さらにヘッドスピード等の要素が加わりますが、大きくはヘッドスピードとの兼ね合いから個人に於ける適性スピン量は変化します。それは、使用するボールの系統と相まることで更に複雑化する要素だと言えます。

③ボール初速
ヘッド単体の、特にフェース面に於ける反発係数に大きく左右されますが、上記①&②同様に、シャフトや「リアルロフト」にも影響を受けます。もちろん、ヘッドスピードやボール単体の持つコンプレッション(堅さ)にも大きく影響を受ける要素です。多少の語弊はありますが、計測上、高いボール初速を弾き出せるヘッド個体は、単純に “飛ぶヘッド” だと言えるでしょう。

さてさて、御懸念の貴殿の御友人が御使用の○○○のヘッドは、モデルの “代” にも差があるようですが、安直に③の 『ボール初速』 が得られるものが多いと聞いております。
その、貴殿の御友人と貴殿のポテンシャルの違いを厳密に調査する方法は、いま貴殿が御使用のヘッドを御友人に最も合った仕様にて作製したものを御友人が打ち、御友人が御使用のヘッドを貴殿に最も合った仕様にて作製したものを貴殿が打つことによって、その違いを検証することですが、既に貴殿には “その思考実験” が為されているようですので、多くは申しません。

すなわち、その御友人は単純に、御自身に合った “飛ぶドライバー” を探し得ている可能性が高いわけです。
ゆえに、貴殿がガッカリするには及ばない。斯様に私は考えます。

 

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